シスタープリンセス
〜聖邪大戦〜

第二話 『戦え、春歌!』

 

 異世界フィアネスに降り立ち、南の森の主であるルーインドラゴンを倒し、<コンフュー>という村の住民と出会った龍也と春歌。
コンフューへとやってきた二人は村人の話を聞いていた。

「聖者様にはこの世界を救っていただきたいのです!」

 この村の長である老人が二人に頼み込む。

「まあ…この世界を救わないと俺達の世界にも影響が出るから来たわけなんだが…具体的にどうすればいいんだ?」

「魔なる物…それを統べる、<統べる者>を倒していただきたいのです!そうすれば、魔物は消滅するはずなのです」

 統べる者。聖者現るとき、同時に現れると言われている者。それは、千影からも聞かされていたので判るのだが…。

「統べる者を倒す……か。簡単に言うが、相手がどんな奴か、どこにいるのか判らないことにはな…」

「統べる者に関する情報はないんですか?」

「それが…どこにいるのかも、どのような者なのかも判らないのです。ただ、その者が魔物を率いて、この世界を支配しようとしているという事ぐらいしか…」

「えっ!?」

 春歌は思わず声を上げる。相手のことに関する情報が全然ないからであった。
普通、ここまで頼むのだからもっと詳しい情報を持っている、と春歌は思っていたのであった。
対して龍也は何やら考え事をしているようであった。

「統べる者を見た者はいるのか?」

「いることはいますが、その者たちは死んでしまいました……」

「そうか。うーん、正直難しいな。相手に対する情報が少なすぎる。当面は、情報収集が主な目的になるな…」

 春歌は龍也の考えにこくんと頷き答える。そこで、村長がハッと何かを思い出し立ち上がった。

「そうじゃ!あの者なら統べる者について判るやも知れない!」

「何か情報を持っている者がこの村にいるのか?」

「この村ではないのですが、この村から西へ行ったところに<賢者の谷>というのがあります。そこにいる大賢者<ハグラルド=レルム=シュ>という者なら何か知っているかもしれません」

「大賢者ですか。兄君さまどうします?」

「行くしかないだろ。相手のことを少しでも知るのが今、必要なことだからな。地図か何か貰えるならありがたいんだが」

「少々お待ちに。壁にかけてある地図を取ってくれないか」

 村長は壁にかけてある地図を取ってくれるように村人に頼んだ。
取ってきたものを龍也たちに手渡す。その地図にはこの村、フューレを含む<フォーサン大陸>が描かれていた。
地図を見る限り、この大陸には大賢者がいる<シェル>、<ゴンゴ>、<フィフス>、<メリウス>という村があり、大陸の中心にはこの大陸を治めている<イクスェス王国>があった。
 この地図にはフォーサン大陸のみしかないが、他にも二つ大陸があるそうだ。
その二つの大陸も魔物がはびこって人々の生活を脅かしている、と村長は言う。

「よし、それじゃ西にあるシェルを目指して旅立つとするか…」

 龍也は立ち上がり、地図を丸めカバンにいれた。

「も、もう行かれるのですか!?」

 村長は驚いた。南の森の主を倒した傷が癒えていないと思ったからだ。
だが、龍也にはいらぬ心配であった。

「ああ。少しでも早く着いて情報を貰いたい。行くぞ春歌」

「は、はい!」

 急ぎ足で龍也を追いかける春歌。村長と村人達はそれを見ながら願うだけだった。
彼らがこの世界に平和をもたらしてくれることを。

 村を出た龍也と春歌は西に進路を向けた。シェルに行くには西にある<迷いの森>を抜ける必要があると地図を見る限り判った。

「迷いの森…ですか」

「ああ、俺から離れるなよ。あーそれとだ」

 龍也はカバンの中から一本の棒を春歌に手渡した。

「これは?」

「軽く振ってみろ」

 春歌は言われたとおりに棒を振る。すると、その棒が上下に伸び、左右に刃が出た。
びっくりしながらも龍也にこれは?と尋ねる。

「俺が昔使ってた武器だ。双刃というものだ。この先、今使ってる武器が壊れることがあるかもしれないからな。使いこなせるようにしておけよ」

「はい、ありがとうございます、兄君さま!」

 武器を収納し、再び歩き始める二人。目の前には迷いの森が見えていた。
その森に入ろうとしたその時。

「ちょっと待ちな!」

 女の声と共にダガーが三本投げられていた。もともと狙いは外されていたようで、龍也たちの目の前に刺さる。
木の上から一人の少女が降りてきた。背丈は春歌と同じくらいで、髪はショートカット。眼は青色だった。フルプレートで身を覆っており、右手にはフランベルジェ、左手には大盾があった。装いから見て教会お抱えのクルセイダーのようであった。ただ、この世界にクルセイダーがいればの話。

「何者ですか!」

 春歌が長刀を構えた。
少女は剣をこちらに向けながら名乗り始めた。

「私の名前はメアリー=ソニアス。このイクスェス王国が第一騎士団が第十三小隊隊長だ」

「騎士団か。クルセイダーぽかったんだがなぁ…」

 と龍也は呟く。それを聞いたメアリーの顔色が激変する。

「クルセイダーだと!?そんな禁句を出すとは何たることですか!」

「クルセイダーが禁句?どういうことだ?」

「ふん、異界の者に説明する気などない」

「さいですか。で、キミは俺達に何かようなのかな?」

「私は我が王、<フェリオス=イクスェス>より聖者を我が国へとお連れしろとの命を受けやってきた」

 龍也はピクっと眉をあげ、春歌はびっくりしていた。王様が龍也たちに会いたいと言ってきたのだった。
春歌の反応はいたって正しいが、龍也は少しひっかかるところがあった。

「何か気になることでもあるのか?」

 メアリーはそんな龍也に向かって訊く。

「ありありだ。どうして、俺達がここに来ることを知っていたんだ?」

「それは、今お前達が会おうとしていた大賢者ハグラルド=レルム=シュより訊いたのだ。彼はどこに統べる者がいるかも知っていたしな」

「ほう……だが、それは王の命であってキミの目的は別にあるんだろ?」

 メアリーの表情が強張る。龍也はやっぱりな…と呟いた。

「どうして判った?」

「どうしてって…普通人を止めるのにダガー投げたり、剣持ったまま現れないだろ?」

 確かにそうだ。普通に呼び止めればいいものをワザワザそうしたのだ。

「あからさますぎたか。なあに、格闘家として“聖者様”がどれほどの力かお手合わせをお願いしたいなと思ってな」

 剣を構えなおし臨戦態勢に入るメアリー。春歌も構えなおすが、龍也は構えずただ突っ立っているだけだった。

「どっちと戦いたいんだ?」

「そっちの女聖者様と戦いたいね…。その武器は我が世界には存在しないからな」

「だってさ。春歌頑張ってくれ」

 そう言うと龍也は道の端に移動し、座り込んでしまう。春歌はえ、えー!!と言いながら龍也のほうを見ていた。

「これも修行の一環だ。俺以外の奴とも戦ったほうが勉強になるぞ」

「…そうですね。判りました。その勝負承りますわ!!」

 

 二人は睨み合ったままの状態のままであった。構えなおしてからずっと睨み合ったままなのである。
どちらも相手の動向を探っているのである。春歌もメアリーも長刀、剣の達人である。達人レベルの戦いになるとちょっとしたことが命取りになるのである。
 それゆえに二人は探りあいを続けているのだ。だが、いつまでもじっとしていることはできない。

 メアリーはバッっと跳躍し、春歌との距離を一気に詰めた。春歌は下段からの斬撃で攻撃を仕掛ける。
メアリーは盾でそれを防御しながら横一閃する。春歌はバックステップでそれを避け、すぐに反撃に移る。
下段・中段からの攻撃を多用しながらメアリーを攻めた。メアリーはそれを軽く剣と盾で受け流し、反撃する。
 春歌は一旦後ろに飛んだ。技を放つためだ。双刃を後ろにやり、前のめりに構える。そして、刃に氣を送り込んでいく。
十分に氣を送り込んだところで、一気に下から上へと双刃を振り上げた。刃に送り込んだ氣が大地を走りぬけメアリーに向かっていく。
メアリーは盾でそれを防ぐ。春歌にはその盾を破る自信があった。だが、盾は破れなかった。氣が盾にぶつかると拡散して散ってしまったのだ。
春歌は少し驚きながらも、別の技を放つ体制に入った。

「驚きましたわ…ワタクシ今の攻撃には自信があったんですよ」

「私も驚いた。まさか“オーラ”を使えるのが自分以外にもいるなんて思いもしなかった」

「“オーラ”…?」

「今あなたがしてきた攻撃のことよ。聖者様のところでは何ていうか知らないが、我らの世界ではオーラというのだ。扱えるものが少なく、私は今初めて私以外でオーラを使う人を見たわ」

 そういうとメアリーは剣と盾にオーラを込め始めた。

「氣とは少し違うもののようだな。俺たちの言う氣とは精霊力のことだからな。この世界で言うオーラというのは闘氣のことなんだろうな」

 龍也はお茶を飲みながら呟いていた。

「より大きな力で攻めれば…!行きますわ、秋野流精霊長刀術・弐の技…刃氣双滅!」

 双刃に先ほどよりも強い氣を込め、一気に距離をつめ二連撃の斬撃を繰り出した。
メアリーは盾で受け止めた。相当のオーラの使い手のようで、込められたオーラが半端ではなく、春歌の今の攻撃は先ほどと同じく氣は拡散させられてしまった。メアリーはそこから、思いもしない反撃を仕掛ける。
右足を前に出し踏ん張りながら、盾に込めていたオーラを解放し、勢いよくぶつけたのだ。

「シールド・チャージ!!」

「んっ!」

 春歌はそれを直に受け、吹っ飛んだ。

「ふむ…盾に送り込んだ氣を相手に盾をぶつけると同時に一気に解放する技か。おもしろいな」

 龍也はにやにやしながらそれを解説していた。誰も聞いてないのにね。

「盾をそのように使うとは思いもしませんでしたわ…」

「この技を受けた人は皆そういう。ついでにこの技も受けてみない?シールド・ブーメラン!!」

 その名の通り盾をブーメランのように投げたのだ。春歌は素早く位置を変え攻撃を避ける。
当然、ブーメランといってるわけなので戻ってくるのだが、それを双刃で弾き返した。

「防具も武器の一つ。全てを使いこなしてこそ最強の戦士へとなることができる!」

 双刃で盾を弾き返した春歌に、メアリーが詰め剣を下から上に振った。
春歌は後ろに転ぶことでそれをかわした。すぐに起き上がり、距離をとる。
メアリーはダガーを素早く投げつつ、距離を詰めるために走り出した。
春歌は放たれたダガーを弾いて少しだけ後ろに移動した。

「秋野流精霊長刀術・参の技…閃光一閃!!」

 双刃の両刃に氣を込め、相手に最大の速さで近づき強烈な二連撃を放つ。
メアリーは剣で一撃を受け、もう一撃を盾で受け止めたのだが完全には受け止めきれず膝をついてしまった。
春歌は攻撃後、後ろに飛び距離をあけた。

「重い…!しかし!…チャージ・ソードブレイク!」

 膝をついた状態から下段から剣を振り上げ、オーラを刃の形にしたものを撃ち放った。
それは春歌にまっすぐ向かっていった。それを横に移動して避ける。そこにメアリーが斬りかかってきた。
双刃で攻撃を受け止め、そのままつばぜり合いになる。

「さすが聖者様。私と戦ってここまでやった奴はあなたが初めてだ」

「それは…どうもですわ」

 二人はそこから最後の一撃を至近距離で放てば…と考えていたが、その考えは無駄に終わる。

「はい、二人ともそれくらいにしておけ」

 龍也が春歌の双刃、メアリーのフランベルジェを叩き落し、そういった。
二人は龍也が近づいていたことすら気がついていなかったのだ。

「お客さんが来たみたいだからな」

 森のほうを向く龍也。春歌たちもそちらを見る。すると、そこには…何と多数のモンスターたちが血気盛んに周りを囲っているのだった。

 

次回予告!

 森から出てきたのは多数のモンスターたちであった。
それらを退けた龍也らは目的地を変更し、フェリオス=イクスェスに会いに行くことにした。
その道中に彼らは衝撃の出会いを果たす。

次回 第三話 「禁忌のクルセイダー」

また来月!